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<重要変更>
昇段・級試験の申し込み用紙に「身長・体重」を記入する欄が追加されました。
つきましては、次回の昇段・級試験から現在掲載をしております新様式の申し込み用紙を使用していただきますようお願い致します。
(2022年7月20日更新)
講道館発行「柔道」九月号 古川副会長兼理事長の投稿文全文
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京都府柔道連盟の近況について
古川 博史
コロナ禍
未曽有のコロナ禍で令和2年は多くの行事が中止となった。
令和3年から火箱保之会長の「感染対策を万全に施し、柔道活動を止めることなく、どうすればできるかを考え実施する」の下命のもと、傘下団体は生駒久視顧問ドクターと連携しガイドラインに沿って各事業を漸次再開した。
その中で、東京オリンピックが1年延期の後に開催され、日本をはじめ世界中で大きな盛り上がりを見せた。日本柔道チームの過去最高の成果と、選手、コーチ、そして関係者の悲願達成に対し賛同と敬意を表したい。本連盟の山元一歩(京都府警察)が、4年間のジュニアコーチを経て、ナショナルチームのコーチとして全日本チームをサポートし貢献できたことは喜びであり、この貴重な経験を本連盟の運営に活かして欲しい。
次いで、ポルトガルのリスボンで開催された世界形選手権大会では、下野龍司(京都文教高校教諭)・大館斗志爾(藤森中学校教諭)組が、「固の形」で金メダルを獲得した。京都市武道センターで開催された平成25年の第5回世界形選手権大会地元開催枠として「講道館護身術」に宮本秀樹・渡辺正喜(共に京都府警察)組、「固の形」に下野・大館組が出場し、講道館護身術が優勝、固の形が準優勝であった。その後、宮本・渡辺組は「講道館護身術」で世界選手権4連覇を達成したが、「固の形」の下野・大館組は、第5回大会以降、世界大会に出場できず、今回のリスボン大会で結実した。また、本年6月に開催された全日本形競技大会では下野・大館組が2連覇を達成した。
本連盟は、歴史的に「形」の大家も多く、今後も「形」の大切さを継承する使命を果たさなければならないと考える。
諸活動について
(1) 女性柔道振興委員会の設置
全柔連が女性の活動参画を推奨する中、その普及・進行に資することを目的に、本年の総会で女性柔道振興委員会設置の承認を得て活動を開始した。同委員会は松本貴子委員長を筆頭に11名(学童、中体連、高体連、大学、柔道場、地域)で構成され、初会合では「女性指導者を支える環境整備」「女性選手の強化方策」「新規入門者の増加・普及発展方策」等について具体的意見が提案された。早速、本年6月12日開催された京都府少年少女柔道チャンピオン大会において、女性柔道振興委員の井上奈美講師(大谷中・高等学校)が著作した絵本第3巻目の読み聞かせを行い、「勝利至上主義偏重の見直し」「柔道の魅力の再確認」「柔道新規入門者へのPR活動」を実施した。今後の進展に期待したい。
(2) 近畿選手権大会
近畿選手権大会を本年3月20日に京都市武道センターにおいて(近畿柔道連盟主催、近畿2府4県の持ち回り)感染対策を万全に期し開催した。緊急事態宣言・まん延防止措置命令が発令された影響で、各府県の予選会も延期され、3月20日開催を余儀なくされた。大会は、事務局の献身的な準備で成功裡に終了した。結果は、女子の部において京都選出選手が近畿地区代表枠5名中4名を獲得し、京都の女子の競技レベルの高さを示した。
(3) 近畿高段者大会と近畿四段段別試合京都大会
当初は4月3日に開催予定であったが、まん延防止措置の発令で延期して本年5月21日に京都市武道センターで開催した。この大会は近畿柔道連盟主催、京都府柔連主管として、歴史ある武徳殿で行われていた西日本高段者大会を継承した大会である。
近畿地区の四段から七段の高段者が参加(306名、内女子16名)した。七段の出場者から「毎年、この大会に出場することを目標に日々精進して稽古に励んでいる」と聞き、歴史ある本大会を継続する使命を感じた。
(4) 京都府少年少女チャンピオン大会
本年6月12日京都市武道センターにおいて3年ぶりに開催した。この大会は、平成2年から府内における柔道の普及発展と競技力向上策として開催されている。当初は小学4年から中学3年までの学年別男女のチャンピオンを決める大会であり、各地区の予選会を経る必要があった。平成20年から中学生の大会増加に伴い選手の負担を考慮して、小学4年~6年までの学年別体重別2階級の男女フルエントリー大会に変更し現在に至っている。出場条件に無理な減量への注意を付記し、井上奈美講師著作の絵本をスクリーンに投影して説明した。
未だにコロナ禍の収束が見えず、また昨今の国際情勢は社会的状況を複雑にしている。その中で我々が柔道関連の活動を遂行するためには、社会の変化に適切に対応しなければならないと考える。
(京都府柔道連盟副会長兼理事長)
本文下部の写真は京都府少年少女チャンピオン大会前、柔道絵本の説明の様子
講道館発行「柔道」五月号 火箱会長の投稿文全文
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新型コロナ禍中の夏と冬二つのオリンピック
火箱 保之
1年延期された2020東京オリンピック・パラリンピックを2021年の夏に、2022年の冬に北京オリンピック・パラリンピックという大イベントを2年連続で楽しめたことは大きな喜びであり、この上ない幸運でした。2つの大会は新型コロナ感染症が拡大している不安な状況で開催されましたが、大過なく終了出来たことは、ボランティアをはじめ重要な任務を献身的に遂行した関係者の協力が何よりの力でした。東京オリンピック・パラリンピック開催の賛否には、国内の世論も高まり、国と東京都は威信と責任を懸け開催を決断しました。国はワクチン接種の遅れを挽回し、安全に実施できる環境を整備し万全を期して推進しました。もし中止していたならば、開催を誘致した責任を問われ、国際社会における日本の信用、信頼はどの様になっていたことでしょう。
何よりも選手たちが長年懸けて会得した技量を発揮する場が提供できたことは喜ばしく、選手たちがモチベーションを維持されたことには最大の敬意を払いたいと思います。さらに、無観客という誰もが未経験の場で選手たちは見事なパフォーマンスを発揮し、彼らの競技に向き合う姿を見た私たち観客は、静寂の中、音による相乗効果もあり、競技そのものを深く理解できました。やり切った選手たちの試合後のインタビュー等では、全ての選手が開催実現に感謝を伝えており、それは選手たちをサポートした関係者にとっては何よりの労いの言葉だと思いました。日本開催は観戦に良い時間帯に多くの競技を目にすることができました。中でもパラリンピック競技のアスリートたちの躍動は、人間の無限の可能性を示してくれました。ある爬虫類の動きを参考にトレーニングに取り組んだといわれる水泳選手の泳ぎには驚嘆しました。動物である人間の身体能力を追求する科学的手法は益々進化することが予想され、期待できるでしょう。柔道競技では結果に対する選手たちの態度に日本柔道の伝統の精神が体現されていると感じました。称賛、祝福のメッセージを多くの方々からいただき、嬉しさとともに誇らしくもありました。
また、柔道の技にこれまでと違う傾向を感じました。特に外国の超重量級男子選手に担ぎ技系統の攻防が顕著であり、軽量級クラス並みの俊敏な足技の応酬等が特徴的でした。これは世界各地で頻繁に行われている国際大会で、同じような体格、体型選手との対戦の中から必然的に習得されたものと考えられます。それらのことに対応しての日本最重量級男子の復活を強く望みます。現強化方針にも男子最重量級強化を課題として掲げていましたので今後注目していきたいと思います。一方、2022年3月8日に全国少年柔道競技会中央委員会が「少年期の正しい柔道を目指して」の提言を発出しました。柔道の理念に基づいた方向性を示したものと理解し賛同します。普及の一環として視覚障害者柔道の「組み合ってから始める」ことを少年規定に取り入れることを提案します。中学生まではルールの中に取り入れて浸透させていくのも一つの方法ではないかと思います。組み合うことで間合いが近くなり、手首、肘、肩等の所謂「かいな」の使い方を覚え、腰、膝の開きから防御に対応する「体捌き」の習得が期待できます。
国際柔道連盟は2021年12月30日に2024年パリオリンピックまで適用される新ルールを発表しました。今回のオリンピックの反省も含めて、12項目について変更を加えています。全体的には望ましい方向の改正だと評価します。全ての項目についての指摘は控えますが、技の連続性重視、「技あり」判定の厳格化、危険な技として「逆背負投」の禁止等には講道館柔道への回帰を期待しています。髪、服装の乱れを正す等の遅延行為にも歯止めをかけ、無駄な時間を減少させて、スムーズでスピーディーな試合進行は望ましいと思います。ただ各状況を的確に判断する優秀な審判員の目と併せてビデオによる検証が重要な役割となるでしょう。
北京オリンピックでは、雪と氷の上をソリやブレードで滑る、風を受けて鳥のように空中を飛ぶ、高く跳ね上がる等の非日常的な動きの中に爽快感を感じました。日本選手団は冬季オリンピック史上最多の18個のメダルを獲得しました。新しい競技においては、勝利と共に選手間の友情や共感を素直に喜び合うシーンが多くみられました。お互いが未知の領域を開発して新しい技を探し求めているという感じなのでしょうか。微笑ましくもありスポーツの楽しさとはこういうものなのだと気づかせてもくれました。歓喜の一方、悲運という場面も多々ありました。陸上競技のリレーのバトンミスと同じように、氷や雪の上で瞬時の転倒は激しい競い合いの中では避けられないことかもしれません。ルール上の判断はビデオ検証で判断されますが、服装や用具の規定違反は、形状等が可視化されないために見解の相違が原因という報道だけで終わりました。依然として消滅しないのがドーピング疑惑です。近年、競技者は低年齢化傾向にあり、また、競技ごとに最適齢期に差異があります。今回の疑惑では年齢が「要保護者」対象となり出場が認められました。オリンピック選手であれば年齢に関係なく自身の違反行為には倫理観も伴った自覚が望まれます。競技によっては出場年齢制限を引き上げる案も浮上しています。スポーツ庁長官が2022年3月17日の毎日新聞朝刊に「フェアこそオリンピックの真価」という内容で冬季オリンピックのドーピング疑惑についてインタビュー形式の記事を載せています。スポーツが与える影響は万人に及ぶものです。社会的な意義を提示し、文化としての価値を高めていかなければいけません。フェアとは正反対のドーピング汚染はスポーツ界に突き付けられた課題であります。2つのオリンピックはスポーツの華やかな面と、その裏にある負の側面をも映し出しました。コロナ禍の悪条件が重なったとはいえ、全世界が一堂に会し、同時期に全競技を開催するオリンピックの理念にも疑問を呈する世評もあり、スポーツの価値を再考する良い機会でした。
(京都府柔道連盟会長)